湯元心得
江戸時代、寛政11年に定められた温泉入浴の心得になります。
今から220年も前にもお風呂に入る際のエチケットが決められていたんです。
内容はというと、火の用心、喧嘩、のぞきは駄目とかお湯の中で泳いだり騒いだり、髪を洗っては駄目という現在にも繋がることから、湯さやに馬を繋いでは駄目というような時代背景が分かるような事も書かれていたりします。
粟津温泉は、開湯当初から泰澄大師の「広く民衆の為に使え」という教えを目的としていたので、古くから上流階級の方だけでなく、農民や商人など皆が集う場所だったのでしょう。
だからこそ、このような湯元心得が定められたのかもしれません。
堅苦しいように思われるかもしれませんが、日本人の人を思う心が垣間見えるように感じませんか。
温泉に浸かる前に、湯元心得を少し思い出して頂けるだけで、ゆっくりと温泉をお楽しみ頂けるように思います。
ちょっと難しいかもしれませんが、「温泉ばかりで仕事が疎かにならないように!」なんてことも書いてあったりして意外と面白いので湯元心得二十一か条を上げておきます。
お時間のある時にでも、一度読んでみてください。
湯元心得二十一ヶ条
- 火之要心之儀 毎度之被御出茂有之候篠 常々無由断巌重相 心得可申事
- 賭及諸勝負近年別而厳重被仰渡有之候間 違失無之様に急度相守可申事
- 走人旅人に宿貸間敷事附 住所等相知 請人等在之候者格別之事
- 湯治人逗留中並往来之節 農業に指障不申様相心得させ可申事
- 湯之内にて口論がましき儀は勿論 都而不作法之儀無之様 相慎可申事
- 入湯之者 外よりのぞき或いは悪口等仕間敷事
- 湯さや外堀内に大小便いたす間敷事
- 湯かこひ板たたき申間敷事
- 湯入口踏段等に腰掛居申間敷事
- 白湯に足あげまた腰懸申間敷事
- 湯のうちにて痰或いはつばき等はき候儀堅無用之事
- 湯のうちにおよぎ又はさはかしき儀いたす間敷事
- 湯の内にて髪あらひ或は月代そり等之儀廊下にても堅不相成事
- 湯のうちへこぬか之類治さんいたすましき事
- かけ湯は勿論 下湯にても洗濯又はよごれたる手足或はむさき物一切あらひ申間敷事
- やまひに寄 至而見苦敷病人等 其宿より下湯に案内いたし惣湯には入申間敷事
- 湯さ屋外堀に内にて商ひまたは干物等は勿論何によらずごみ立申間敷事
- 湯さやに馬繋申間敷事
- 湯廊下にて男女雑談等昼夜とも堅不相成候事
- 行燈の火をけし或は紙をやぶり申儀堅不相成候事
- 廻在所の百姓に農仕事より直に湯入申節は外にて手足ことごとくあらひ入湯いたし可申事
令和3年2月21日
法師番頭の与太話